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痛みに苦しむ五十肩の正体 ~前編~

  • yshibata63
  • 1月12日
  • 読了時間: 3分
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コラム19号で”手を挙げて! 五十肩にはなりません”を書きました。

あらためて読み返してみると、少々サラッと書き過ぎていたのではないかと反省の念を抱きました。

この五十肩あるいは四十肩(正式名称:肩関節周囲炎)は、多様な症状や痛みの苦悩の深刻さにおいて関節に加わる最も辛い症状の一つです。

 

そして決定的な整形外科的治療方法がなく、三療(鍼・あん摩・指圧・マッサージ・灸)の治療においても症状の解消に苦慮しているところです。このことから、改めて五十肩の病状と治療に向き合って書くこととしました。


【原因と病態】

40歳、50歳という年齢的加齢によるものではありますが、過度な運動・外傷・寒冷などが引き金となって発症します。肩関節は人体中最も可動性が大きく、様々な方向に動かすことのできる自由度の高い関節です。

これを可能にしているのは、解剖学的な構造です。関節は出っ張った関節頭(かんせつとう)と頭の受け皿となる窪んだ関節窩(かんせつか)によって成り立っており、両者の接続、はまり具合によって動きの大きさが変わります。

 

このうち肩関節は、肩甲骨(けんこうこつ)の上外側の関節窩(かんせつか)と呼ばれる窪みと、腕の上腕骨の関節頭(かんせつとう)との間で作られる関節です。肩甲骨の窪み(窩)の部分の面積がとても小さく浅いにも関わらず、一方の上腕骨の頭はボールのようにとても大きく、窩にはまり込める形ではなく、ここで動きの自由度が他の関節に勝ることになります。関節を補強する役割を果たすための靱帯も細く緩やかにつながっていて、関節の大きな動きを許しています。

 

一方、肩関節を動かすための筋肉は、肩甲骨と上腕骨との間に10筋、肩甲骨と脊椎骨・肋骨など他の骨との間に6筋と、それぞれに異なる動きを行う筋肉が多数関係して様々な動きに適応します。さらにこのうちの4筋は、関節等を覆うように一つに合体して、”腱板(けんばん)”という強い筋肉の組織として肩関節の動きを適切で強固なものとする仕組みも備わっています。

 

人は生れて40~60年の長い年月の経過の中で、肩関節は激しく連続的な動きをこなしてきた他、重い物を持ったり支えたり、また鉄棒にぶら下がったり、他者に強く引っ張られたりと、大きな過重に耐えて、フルに動いてきました。ここにきて耐えかねた関節の軟骨・筋肉・周辺の組織が炎症を起こしてしまったということになります。そしてこの炎症はすぐには止まらないのです。

 

一定の期間を超えると炎症に伴う組織の癒着、石灰化、腱板の断裂などの病的症状が起き、激しい痛みと運動制限が生じて苦しむことになるというのがこの病気の正体です。  

次号に続く)   <第49号>

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